日本刀は古くからわが国が誇る鉄の文化財です。

四方山話35 「車椅子の少女」

2018年12月06日 更新

刀剣博物館 1階エレベーターホールで、母親と同伴の車椅子の少女と一緒になった。
3階の展示室は日曜日のせいか、満員であった。

刀剣博物館展示室の雰囲気がとても良い。
満員のお客さんを包み込んでいるのに、込みあった感じが少しもない。
一列に並んで、皆さんゆっくり観賞している。

少女は車椅子から降り、母親に手を引かれ、私は後からいっしょにゆっくり進む。
=日本刀と車椅子の少女=初めての経験であった。

歩いていて、うれしくてたまらなかった。
ひと際鈍い私達を誰一人いやな様をするでなく、静かに追い越していく。

説明ボードを熱心に読んでいる少女の頃合をみはからって、一声、二声、解説している私が居た。
邪魔になってはいけない、離れようとした時、
=おかげさまで、日本刀が身近かに感じられました=と、
少女の手を引く母親から、礼を告げられた。

二人に目礼をされた時、私の心は浮き立った。
全国大会二日目の終りに立ち寄った刀剣博物館。
疲れをすっかり忘れてしまった。

永い刀剣生活も残り少ない時間しか残っていない老年の私だが、忘れがたい短い時間を持つことができた。

人生の幸せはほんの一瞬の中にも有る。
=日本刀が身近かに感じられました=
刀の解説らしき事をずいぶんやってきたが、こんなにうれしい礼の言葉をもらったことはない。

小さな頭を下げてくれた車椅子の少女の姿が目に焼きついている。

全国大会一日目の祝賀式典の中で、永年、刀剣界での活動に功績があったとの表彰をされた(10名)
その時は、大勢の中で面映ゆいばかりであったが、
二日目最後に刀剣博物館で車椅子の少女にあえたことも
神に与えたまわれた表彰であったと思うことにした。

何事も飽かず、弛まず、続けることである。
さすれば冥途の土産にめぐり会うことも有る。

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今後は忘れないようにいたします。
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