日本刀は古くからわが国が誇る鉄の文化財です。
四方山話7 どうしてくれる!!
平成五年一月、刀剣博物館で開催された「特別展一文字の美」の図録を持っている。
20年程前の展覧会で、私自身が観たのに違いないが記憶が定かでない。
36振りの名品が解説付きで、立派な図録になっている。
内訳は国宝2本、重要文化財3本、本重要美術品10本、特別重要刀剣16本、重要刀剣4本、無冠1本という豪華なもので、望んだところで高嶺の花の一文字が咲きほこっている。
特別展等、的をしぼった図録は楽しく眺められ、今まで何度もひっぱり出していたので、本箱の最前列に他の図録とともに並んでいる。
今年9月の本部よりの定例鑑定会で、重要美術品の宗吉を拝観した。帰宅後、一文字の美をひっぱり出してみると、図版の3ページ目にしっかり紹介されていた。こんな時は、ちょっと前に手にした刀の重みと眼にする図録が一致してうれしさがひとしをである。
ところが私も年を経た古狸になっている。喜んでばかりではいられない。
1Pより36Pまで、再々見し、一言文句が言いたくなった。
最初に366本の格付けを紹介したが、チョット別の分け方をして見ると、36本中、生在銘の品が11本、磨上在銘が18本、大磨上が7本、茎に手が加わった物が実に7割になる。
茎の鑑賞が刀を拝観する時の大きな楽しみであるのに、鎌倉中期頃よりの貴重な名品に無残な手が加わっている。磨上された茎先と区送りされた刀身部分から、かくも素晴らしき御刀の生気が抜けているような気がして落ち着いていられなくなった。
何事かの理が在ってのこととは承知しているし、刀身の美しさを否定するものでもない。されど古狸ゆえに我慢できずに一言、叫びたくなるのである。
”どうしてくれる!!”。
追伸、平成十年九月開催の「長船鍛冶の技と美」より、同様のことをしてみると、
(短刀、ナギナタを除く)32本中、生12本、磨上18本、大磨上2本であった。
もう一度言わせてもらう”どうしてくれる!!”。