日本刀は古くからわが国が誇る鉄の文化財です。

11月鑑定研修会の報告

2017年12月04日 更新

11月12日(日)、福岡市赤坂の市民センターにて、博多支部主催の定期研修鑑定会を開催しました。
用意した鑑定研修刀は下記の4振と、小道具の4点でした。


1号 刀、銘、筑前国福岡住守次、鎬造、庵棟、身幅尋常、元先の幅差小さく、重ねやや厚く、反り浅い。中鋒、柾心の肌、鎬柾。映りあり。物打ちのあたりは飛び焼きになる。刃文、丁字乱れ、所々に尖り刃(イカの頭)状の逆丁字が混じり、物打ちのところにて、大きく乱れ、鎬にまでかかる。帽子乱れこむ。茎、生、鑢目、勝手下がり、目釘穴、1。


2号 刀、銘、筑前国住貞之丞利次、差表、梅花樹彫 差裏、勢如弦弩、節如発機の文字彫、鎬造、庵棟、身幅尋常、元先の幅差小さく、重ねやや厚く反りあさい。中鋒、小杢目肌に板目肌流れて柾目肌になるところがある。鎬、柾目。刃文、中直刃に沸厚くつき、小足、小互の目。小丸帽子。茎、生。鑢目、勝手下がり。目釘穴、1、茎尻に止め釘穴、1。


3号 刀 銘、筑前住源信國吉政、鎬造、庵棟、身幅やや広く、中鋒のびる。鍛え小板目に流れ柾交じり、地景いり、地沸細かにつく。刃文、やや小振りの丁子刃に足長く入り、葉入り、匂い締りごころに小沸つく。尖り気味の帽子に足入。茎、生、鑢目、切り。目釘穴、1。


4号 脇指、銘、筑州住源信國重包、鎬造、庵棟、身幅広く、反り深い、元先の幅差少なく、豪壮。刃文、高低差のある、のたれ刃に沸厚く着き、刃縁にほつれ、砂流し等の働きがある。帽子小丸。茎、生、鑢目、切り、目釘穴、1。大振りの銘を茎の鎬よりに打ち込み深くきる。



今回の鑑定研修刀は地元の新刀期の筑前刀4振りでした。新刀期の筑前刀の刀匠群は6派があるようですが、2大流派の信国系の重鎮の重包と同じ信国系で備前伝の刀を鍛えた吉政の2振り、福岡石堂派からは、江戸の武蔵大掾是一の弟子で、福岡石堂の祖である是次の嫡子の利次刀と、是次の弟の守次の2振りでした。
今回の鑑定研修刀は、すこぶる健全、茎が完全なる生で、銘は鏨マクラが立ち、ヤスリ目も数える事ができるのではと思えるほどで、錆色も見事、刀匠により造り出されて、多くの人々が大切に保存し、受け継いできたことが実感できるものでした。
又、同時に出品された小道具は名工、浜野政随の小柄 縁頭2点、矩随 鐔1点、直随 鐔1点のこれまた頗るつきの品でした。
(武富記)


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