日本刀は古くからわが国が誇る鉄の文化財です。

4月の定期鑑定研修会の報告

2018年05月22日 更新

4月の鑑定研修会は例年、岐阜支部との交流会を開催してきました。

今年は岐阜支部は4月の下旬から岐阜博物館での刀剣展の計画があり、その準備で岐阜支部長の近藤氏は大変な多忙の中、日程を調整していただき、8日(日)に赤坂中央市民センターにて鑑定研修会を開催しました。

近藤支部長に用意していただいた鑑定刀は、古刀期の関の名品5振りでした。
当日の参加者は博多支部員の他に、長崎支部から12名、筑後支部より4名の参加があり、大盛会でした。

 

1号 刀 銘 兼定
法量、長さ712mm 反り23.0mm 元幅25.5mm 先幅15.0mm 元重5.6mm 鎬造り、庵棟
(形状)華表反り深い太刀姿、細身にて踏ん張りがある。(地)板目よく練れて刃寄り流れ、刃寄りに鮮明な直映り、その上に地斑映りが重なり、物打ち乱れ映りに変化する。(刃)匂い出来の細直刃、表裏の物打ちに節刃がある。(帽子)中丸で、倒れる。(茎)生ぶ、不鮮明ながら大鷹羽の名残がある。

 

2号 短刀 銘 兼元
法量 刃長250mm 内反り 元幅21.7mm 元重5.1mm
(形状)平造り、真棟 (彫)表裏とも刀樋、腰に添え樋 (鍛え)板目良く詰み流れ、底に地景かかり、淡く乱れ映り立つ。(刃文)匂い口の締まる中直刃、焼きだし糸直刃 (帽子)直に先小丸、短く返る。(茎)生ぶ、鑢目檜垣、先刃上がり栗尻。

 

3号 刀 銘 濃州関住兼定作 永正七年二月日
法量 刃長695mm 反り17.5mm 元幅32.0mm 元重7.3mm 先幅19.8mm
(形状)鎬造り、反りやや深く、平肉つく。(彫)表裏ともに片チリの棒樋を区上で丸留め。(鍛)小板目流れごころあり、地沸ついて冴えて淡く映り立つ。
(刃文)中直刃に小互の目交え、鼠足がよく入り、小沸つく。(帽子)先突き上げ小丸、返り深い。(茎)生、先刃上がり栗尻、鑢目鷹羽。

 

4号 太刀 銘 兼元
法量 刃長701mm 反り26.5mm 元幅32.1mm 元重6.7mm(先幅)18.6mm(形状)鎬造り、庵棟、反りふかく、元先の幅差があり、手持ち軽い。(彫)表裏ともに片チリの棒樋を区上で丸留め、その上に三鈷柄の爪を重ねる。(鍛)板目肌、地沸つき肌立ち流れ柾、地斑映り立つ。(刃文)こずんだ小互の目、尖り刃混じる。砂流しが頻りにかかる。(帽子)沸ずいた地蔵帽子に掃きかけ浅く返る。(茎)生、鑢目浅い鷹羽。

 

5号 刀 銘 左衛門尉藤原氏房造 永禄十三年四月吉月
法量 刃長700mm 反り12mm 元幅27.5mm 重ね6.6mm
(形状)鎬造り、庵棟、反りあさい。元先の幅差少なく、中切先伸び、平肉枯れる。(鍛)小板目精良につんで流れ、鎬地柾がかり、淡く乱れ映り立つ。(刃文)匂口締りごころの表裏揃った浅い湾れに互の目、所々に足と葉を交え、3、4個の飛び焼きを置く。(帽子)弛んで先小丸、(茎)磨り上げて先ブツ切り、鑢目ごく浅い勝手下がり。

 

岐阜支部との交流会では、毎回近藤支部長は鑑定刀については、A3紙五枚に縮小の刀身図と詳しい解説文を参加者全員に、更に賞としての額装の押し型をいただいてきました。今回は来の名品と鑑定できる3号の当たりの入札者に額装の押し型は贈呈されました。

1号の兼定は無理でも刃文から兼吉の入札にて同然 2号は兼定か、兼元か迷うもので、重刀、3号は、今回一番の入札難の刀で、来を写して真に迫り、今村押型所載の重刀。4号は尖り刃の一部に三本杉が見てとれる重刀でした。

また5号はやや浅い湾れに互の目、兼房の刀工がまず思い浮かぶ刀で、年期が普通は切らない四月、吉日が吉月となるなど不思議な点もあり、又この刀は織田信長が比叡山攻めの時の佩刀との事で、1号から5号全て関刀の逸品、関刀の優秀さを再認識させられました。

近藤支部長には、多忙の折、遠路来福いただき厚く御礼申し上げます。又、長崎支部、筑後支部の皆様には御参加いただきありがとうございました。

(武富記)

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