日本刀は古くからわが国が誇る鉄の文化財です。
6月定期鑑定研修会報告
6月は日本美術刀剣保存協会の刀剣による鑑定研修会でした。会は南区市民センターにて協会の大井講師に来福していただき実施しました。
参加者は博多支部員の他に筑後支部より3名、佐賀より1名の参加がありました。鑑定研修のために用意されたのは下記の5振りでした。
1号 太刀 銘 雲次 目釘穴 3個 輪反り、大すり上げの茎尻に銘あり、地は肌立ち、地斑映りの中に独特の暗部あり、刃文は下半は小丁子が目立つも、上半部は直刃が主で、逆がかりの小丁子に尖り刃あり。帽子は丸く返える。
2号 刀 銘 村正 長さ 2尺5分 鎬造り、寸詰まりの先反りの付いた姿。地は小板目肌、一部に板目、白けを感じる。刃、焼きだしあり、互の目、小互の目、尖り刃、角がかった刃等が塊となり高低の差大きい刃文、足入りに小沸つき、帽子、乱れ込んで先やや尖る。
3号 短刀 銘 肥前国忠吉 宗長 長さ9寸2分 平造。小板目肌に流れ肌目立つ。地沸微塵に厚く付き、地景細かく入る。刃文、のたれに小互の目混じる、のたれの谷に小沸厚く付く、匂口明るく冴える。帽子、浅くたれて先尖りごころに小丸。彫物、表、樋中に梵字と不動明王の浮彫、裏、梵字に刀樋と細樋を掻き流す。
4号 太刀 銘 保弘 2尺6寸 鎬造。地は板目に杢交じり、流れ肌に地沸つき、乱れ映り鮮明。互の目主調に小互の目、小丁子、物打ち部分は直刃調。帽子、横手上で立ち上がり気味に小丸。
5号 刀 銘 肥前国住遠江守藤原兼廣 長さ 2尺5寸 鎬造 反り高く、姿が良い、地、肌目、やや目立つ部分があるが、良く詰んでいる。大小互の目、のたれに沸付き 沸崩れて、派手な刃文。互の目の中に葉あり、帽子、のたれ込んで先やや尖り気味に小丸。
今回の鑑定刀は1号は刃文のみでは青江の見方や長船系の感じがする点があるものの、尖り刃や地斑映りの様子から雲類との断定ができ、4号は刃文、地鉄、映りから長船系の刀工の作だろうと答えがだせる太刀でした。
5号は古刀の見方は無いが、新刀期のどの時代かの判断に迷う点がありました。2号の村正は戊辰戦争の東征大総督の有栖川宮親王の差料で、後に有栖川宮家を継がれた高松宮家から協会が寄贈を受けた刀であり、3号も有名な忠吉の短刀で、誌上鑑定なら迷うことの無い刀で、手に取り鑑定する時との差の大きさに驚いたものでした。
大井講師には時間ギリギリまでお世話していただき感謝申し上げます。
(武富記)