日本刀は古くからわが国が誇る鉄の文化財です。

9月鑑定研修会報告

2017年10月02日 更新

9月10日(日曜日)に福岡市赤坂の市民センターにて、13時30分より博多支部による鑑定研修会を開催しました。
準備された刀は下記の5振りと、小道具4点でした。

201709001


1号 刀 無銘 左弘安極メ
法量 刃長 699mm 反り 13mm 元幅 31.5mm
鎬造り、身幅広く、元先の幅差目立ず、反り浅い。彫、表裏とも片チリの棒樋を掻き通す。
刃文、小沸出来の小互の目小湾れ、こずみ、砂流しかかり、帽子乱れ込、先尖りごころ。


2号 短刀 銘 安吉
平造りの寸延びの短刀、身幅やや広く、反り浅い。地鉄、板目に杢交じり、地沸つき、映りあり、
刃文小のたれに互い目、沸よく付く。帽子のたれ込に先尖る。


3号 刀 無銘 手掻包清極メ
鎬造り、身幅やや広く、元先の幅差目立たない。中切先、反りあさい。地鉄、良く詰み、柾肌は目立たない。
刃文、中直刃、ほつれ、打ちのけあり、小沸よく付き、匂深い。


4号 脇指 銘 表 備州長船長吉 裏 永和二年五月日
法量 刃長 384mm 反り 4mm 元幅 290mm
平造り、三つ棟、身幅ひろく寸延びて、浅く反りつく。鍛え、板目に杢交じり、地沸つき、地景入り、淡く映りごころがある。
刃文、頭の丸い互の目に小のたれ、丁子ごころの刃が交じり、僅かに飛焼、湯走り、金筋入り。帽子 乱れ込み先尖りごころに返る。
茎 生ぶ、目釘穴 2個


5号 薙刀 銘 九州筑後ニテ下坂八郎左衛門作 慶長八年八月吉日 樋口越前守指料
法量 刃長 486mm 反り 25.0mm 重ね 7.7mm
薙刀造り、中筋の広い真棟。彫、表裏ともに薙刀樋と添樋。鍛 板目に杢交じり、地沸ついて肌立ちごころに鎬地は流れ柾。
刃文、浅いのたれ調に互の目を交え、足、葉入り、中程に斑沸つく、棟を弱く焼く。帽子、乱れ込、先小丸に返る。
茎長く生、目釘穴よりは平地。鑢目は上部は鷹羽、下部は桧垣。



1号から5号まで4本が重刀で、しかもすこぶる健全な逸品ばかりでした。
1号はすりあげですが、地肌、刃文は健全で、板目に大板目に杢交じり、地沸ついて地景いり。この時代の左系の刀の特徴の砂流しがあるものでした。
2号の安吉は刃文の沸が深く、大左に酷似している作でした。
3号の大和の手掻包清極めの刀は刃縁の働き、地肌の見事さが一段と映える優刀でした。
4号の脇指は茎が生、しかも裏銘があり、長義系の刀匠にして作品の稀なものです。
5号の薙刀は筑前下坂の兼成、辰仲、辰成等の祖と考えられる刀匠の作で、樋口越前守は筑後柳川32万石の藩主田中吉政(1600-1609)の家臣だろう、尚、裏銘の慶長八年は2月12日に徳川家康が征夷大将軍に任じられ、江戸幕府開府の年です。
小道具については4点いずれも健全で仕事の精緻さには驚き、感服しました。
(武富記)

201709002

目貫 ブドウ図 目貫 ブドウ図
目貫 秋草図 目貫 秋草図
笄 秋草図 笄 秋草図


小道具について

鑑定刀捜し